遺伝子組換えによる新規形質花きの作出

CRES-T法による花形改変

CRES-T法は、シロイヌナズナのSUPERMAN遺伝子で同定された転写抑制ドメインを任意の転写因子に連結することにより、転写抑制因子へと改変し、目的遺伝子の発現を抑制する新規のジーンサイレンシング技術である。このCRES-T法を用いて、日本固有の古典園芸植物であり、文科省のナショナルバイオリソースの一つに選定され、花色・花形の変異の遺伝解析が進む世界に誇る花きのモデル植物であるアサガオの花形改変を行った。極性決定遺伝子(葉や花の表裏を決定する遺伝子:YABBY, KANADI, PHABULOSA)や、八重咲きや花器官形成に関わる遺伝子(MADS-box gene)の機能抑制により、江戸変化朝顔を超える新規形質花きの作出を試みた。また、CRES-T法の応用として、酵母のGAL4/UAS転写システムを利用し、過剰発現している遺伝子の発現を任意のタイミングで発現誘導されたGAL4SRDXによって一過的に抑制する事が可能な新規の誘導型発現抑制ベクターを開発した。GAL4SRDXの誘導発現には、エタノール誘導プロモーターと熱ショック誘導プロモーターを利用した。このベクターを用いて、DPSRDXの発現を制御し、八重アサガオの作出に成功した。このベクターは、新品種作出の際、障害となるような外来遺伝子の過剰発現による生育障害や稔性低下を回避することが期待される。

遺伝子組換えによる黄花アサガオの作出

現在まで、様々な植物種において花弁におけるカロテノイドの蓄積制御機構が研究されているが、これまでに研究されてきた全ての植物種には黄色い花弁をもつ系統が存在していることが明らかとなっている。一方、アサガオでは、黄色い花弁をもつ系統が存在せず、黄花アサガオの作出は育種目標の一つとなっている。このような植物種において、カロテノイドの蓄積により黄色い花弁を持つようになるのかを調査することにした。本研究では、花弁においてカロテノイド合成が行われるようにカロテノイド合成酵素遺伝子を花弁特異的プロモーターにより発現するようなコンストラクトを作製し、形質転換体アサガオを作製した。カロテノイドの代謝系には複数のステップが存在することから、複数の遺伝子を組み合わせて遺伝子導入する多重遺伝子発現ベクターを構築している。本研究の成果は、黄色い花弁をもつ系統が存在しない植物種での黄花の作製に応用できるものと期待される。

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